作家紹介-制作への想い

友安一成
友安一成
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 須く芸術表現の目的とするところは、生きることと同じであるように、なにかしらでも世界の全体像に触れようと試み努力することである。しかし我々の作り出した近代の芸術表現は、行き過ぎた人間中心主義的な表象化であることは自明のことである。実はそうした近代の方法論と価値観とをしっかり抱え込み、近代の超克と現代性とを唱えているだけかもしれない。私は謙虚で正直な位置に立ち生きたいと思う。絵画から出発し、いま版による表現がもつ構造の広がりに大きな可能性を感じる。版表現全体の持つ大きな構造であり、空間のことである。版表現の、手わざを超える不思議な跳躍力、いわば開かれてある豊かな温床のような創作の場のことだ。そうしたなかで、今生きて表現を考えようとするとき、私は謙虚な濾過装置のようでありたいと考えている。この版による表現がもつ構造の中で、何ものか世界に出会いながら、なお装置を通過し生まれ出てくるものがあるとしたら、もしかしたらそれが少しばかり私の表現と言えるのかもしれない。
 
友安径子
友安径子
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 絵画の勉強を続けていた私にとって、版画との出会いは衝撃でした。当時、一筆一筆加筆していくごとに結果を伴う油絵の仕事は、終わりの見えない苦渋を伴う作業でした。一方、版表現においては、その過程の全てがブラインドワークでありながら、結果として生まれでてくるものは、魅力に満ちた跳躍力を持ちながら、さらに私を超えて不思議に自立したものであることへの驚きでした。こうした豊かな版表現の構造の中で、「版上での私自身は、何ものにも邪魔されることなく、豊かに心と手の遊びが出来るのではないか!」との思いで今日まで版による表現を模索しているところです。
 主として銅版画による制作を進めていますが、一方でその技法と材料や道具は、その一つ一つがそれぞれに頑固に筋を通して私を拒みます。そのことは私の至らなさの確認でもあり、常に新しい課題となりますが、同時にそのことは大切な楽しみであり、原動力でもあるのです。